まえがき
ミリアニ7話が放送されたということで、今回はこの曲を語りやす。
いまだに初っ端のコール間違えちゃうのは、俺だけじゃないよね?
歌詞考察
日?陽?美?ビビッ?
『海風とカスタネット』という楽曲。
肢体まばゆき「夏の曲」であることは、全員の共通認識だと思う。
キービジュアルを見ても楽曲を聴いても、余すところなく夏の華やかさを体現している。
ここで一つ考えてみてほしいことがある。
この曲を漢字一文字で表すなら、あなたは何と答えますか?
答えは色々あろうかと思いますが、私が答えるなら
『微』
になろうかと思います。
情景描写と心情描写。
本曲では2つの観点から「夏」を交互に描いているんだけど、どちらも共通して”少し足りてない”。
言葉足らずなことは重々承知していますので、そこらへんについて今から語っていきましょう。
微と
冒頭に「この曲は夏の歌だ」なんて話をしたけど、夏と言えども色々な夏がある訳で。あの苦行のような「真夏日」を連想する人は少ないんじゃないでしょうか?
どちらかというと”可憐”や”清涼感”といった「初夏」って言葉が似合う楽曲だと思う。なんとなく暑そう、くらいの熱感が漂ってるのが本曲の情景。
そんでもって、今度は曲中の主人公に目を向けてみる。
飲んだサイダー
『海風とカスタネット』Team2nd
いつもと違う味した 微炭酸
(ドキドキと未来)
「サイダー飲んだらいつもと味が変わっちゃった!?」という一昔前なら1週間くらい隔離されそうな事案を謳ってるんだけど、ここで注目したいのは”曖昧な表現”が並んでいることだ。
「炭酸」って概念は「高揚や青春、恋」の比喩として使われがちな言葉。ここでも似たような使われ方をされてると思うけど、わざわざ「サイダー」という固有名詞から「微炭酸」という一般名詞へのすり替えを行っている。
また、直後のフレーズを眺めてみると、その味覚の変化を「未来への高揚感のせい(=ドキドキと未来)」と気づいていながらカッコ書きという曖昧な文章表現にしている。
何が言いたいかと言うと、
「わざと回りくどい言い方にしてね?」ってこと。
余談だけど、この「微炭酸」というフレーズ。
本曲の楽曲背景を踏まえた選出だろうと思うよ。
本曲作詞の真崎氏が以前「MOR」に出演された際、SideM『Platinum MASK』という楽曲について語られていました。
この楽曲、作中では「ソフトドリンクのPR」として披露された楽曲なのですが、そのイメージを踏襲した作詞をしていたことを明かされています。
具体的にはソフトドリンクタイアップに合わせて「飲み干す」という言葉を入れ込んでみたり、「王冠(=ミルククラウン)」の意味合いをかけたり。改めて、作詞家さんの技量に震えた記憶がある。
それで言うと、多分『海風とカスタネット』も同じなんじゃないかなと思う。
本曲は「微炭酸飲料のタイアップ」って設定でミリシタ内で披露されてたけど、そこらへんも踏まえたワードチョイスな気がしてる。また「MOR」に引きずり出して聞いてみよう。
話を戻して。
ぬるい海風
『海風とカスタネット』Team2nd
微熱と夢
このフレーズにもある通り、この曲は両方で”微かな熱感”を描いてる。
情景では、夏に向けて熱を帯び出した「初夏」を奏でていて。
心情では、名前を付けられないでいる胸の高鳴りを謳ってる。
私には、この2つが同じことだと思えるんだ。
どちらも「これから先”アツい”ことがやってくる予感がする」という意味で。
本曲は、”1年で最も暑い季節の手前「初夏」になぞらえて、なにかアツいことがおこりそうな予感を描いた楽曲”ってのが、私の思うAメロ~Bメロあたりの解釈だ。
ただ、時間が経てば季節が移ろうように、楽曲だって進行と共に印象が変わっていく。
本曲の序盤が「初夏」であるならば、当然その次に来る季節は決まってる。
本曲における灼熱の季節、「サビ」を見ていこう。
Beat
鳴り止まない Myカスタネットが
『海風とカスタネット』Team2nd
ああ もう止まらない
キミと見つけた 季節のせいだ
コールも入って来たりで一気に華やぐサビパート。歌詞を見ても主人公の高鳴りは、「Myカスタネット」という明確な音に変貌を遂げている。
ここでは、そのカスタネットが鳴る原因が「キミと見つけた 季節のせいだ」と言ってるんですね。
サビ辺りで面白いのは、この「季節の捉え方」なんすよ。
『ちいさい秋みつけた』って童謡がありますけど、雰囲気それに近い。なんとなく「夏」を物質的に扱ってるというか、海辺に転がってる貝殻を拾うみたく「夏」を身近に転がってるものかのように描いてる。
キミが胸を焦がすから
『ミュージック・アワー』ポルノグラフィティ
夏が熱を帯びてく
多分言いたいことはこれと同じ。
夏が暑いのは、季節風のせいでもラニーニャのせいでもない。
何か始まりそうな”高揚感”こそが、己を急かす心と身体の”摩擦熱”こそが、夏を夏たらしめる。
そう言うてる訳です。
この曲は「予感の唄」だって最初に書いたけど、徹頭徹尾その価値観を肯定してる。高鳴りに正直に生きることの楽しさを推奨してる。
この“不明瞭な何か“を“躊躇いなく謳歌しようぜ!!”って構造。
胸の「高鳴り」を「カスタネットの音」に例えた歌詞。
何となく見覚えあると思いません?
これって、ミリアニOP曲『Rat A Tat!!!』でやってることと一緒だと思うんすよね。ってことはミリアニのプロローグイメージ曲としてつくられた『セブンカウント』に対する「一種のアンサーソング」という言い方もできるってことよ。
チーム曲全8曲が出揃った今だから言えるけど、なんとなく共通して「不可視のモノにカタチを与える」的なコンセプトはありそうだなとは思う。
『セブンカウント』という楽曲は、サビがすべて「たとえば~」の枕詞から始まる無垢なる楽曲。「無垢だから何にでもなれる」という可能性を説いた唄である。
ミリアニ発のチーム楽曲は、その可能性の一端を魅せつけたい意図があるんじゃないかと邪推してる。
まぁ、実際どうか知らんけど。
あとがき
本文中では「予感の唄」という解釈をしましたが、正直「恋の歌」としても受け取れる楽曲だとも思う。実際、私も長らくそうだと思ってたし。
サビで歌われるカスタネット云々の歌詞なんて恋の歌と捉えたってまったく違和感ないし、気になって調べてみたら、カスタネット自体に雌雄の概念があるし、一般的なカスタネットに連想する”赤・青”のカラーリングを”男女の比喩”と捉えることだってできるし。
だけど、歌詞全文を読んでみて解釈が変わったので、今回はこっちで語りました。
あっ。
あと、好きな歌詞の話していいっすか?
信じてみたいMyカスタネットが
『海風とカスタネット』Team2nd
クレッシェンドしてくのを
キミは隣で 季節、感じた?
これ久々に出会った「歌詞カード読んでキュンとするタイプ」の歌詞だったんだけど、この唐突な疑問形よくないっすか?
曲中では「私とキミ」の2人でずっと物語が進行してて、そのてんやわんやを後方腕組P面で他人事として眺めてたんっすよ。
ところがっどこい、
「キミも隣で感じてくれてるでしょ?」
いきなりこっち向いて話しかけてくんのよ、この歌詞。
次元の壁を貫通して俺と目が合うんよな、この歌詞。
マジで久しぶりに甘酸っぱかったわ
やっぱり、これ恋の歌かもしれん。
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